パテックフィリップ ノーチラス 男性向け3針ステンレスモデルはすべて廃盤に

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パテックフィリップ ノーチラス 5711/1A-010が廃盤となる。

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昨年の時点でパテックフィリップ ノーチラスの白文字盤モデルは廃盤となっていたことから,ブルー文字盤モデル(5711/1A-010)についても廃盤になるのではという噂はあった。

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またパテックフィリップのティエリー・スターン社長はステンレスモデルがブランドの顔となることについて従前から否定的だった。

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ゴールドないしプラチナモデルのほうが,社会通念としてはステンレスよりも希少で価値があると認識されている。ブランド価値を維持するためにはブランドの権威(それは希少性や神話などによって形作られる)が絶対に必要不可欠であるが,ステンレスでは何かの拍子にその権威が維持できなくなることを恐れているのだろう。

それともう一つ,はっきりと言明されていないがステンレスモデル,特にステンレススポーツモデルについてブランドが懸念していることがあると思われる。

ステンレススポーツモデルがこれだけ隆盛しているのは,ファッションのカジュアル化に起因するという指摘がある。

カジュアル化というとわかったようでわからない説明だが,もう少し具体的に言えば「着用者が気を遣わなくて良い格好」が好まれていて,マスもそれを求めているということだ。

ステンレスモデルが現在好まれているのは,「ゴールドモデルだと傷がついてしまうが,ステンレスモデルではあまり傷もつかず,気を遣わなくて良い」という理由がかなり大きい。

「傷がついてしまう,傷があまりつかない」ということはどういうことだろうか。

それは「着用者が傷をつけてしまうような環境にいる」ということだ。

すなわち,「着用者は腕を使用して,自ら何か行為を行い,働く者」である。

翻って,ゴールドモデルでも傷がつかない生活をしている人間とは,「着用者は自分で動かず,他人に行為をして貰い,働かない者」ということになる。

ハイエンドブランドとしては製品を後者に買ってもらいたい。

そのような人物が主な購入者であるということは,ブランドの権威を強化することはあっても弱めることはないのだから。

機械式時計,特にハイエンド側の製品は他者に対して,同じ機能を有する製品が数百円で手に入るのにもかかわらず機能的には不要な物品に対して着用者が多額の出費をすることが可能であることを知らしめるという一側面がある。

購入者がこの側面を無意識的にか意識的にか認識していることで,ブランドの権威が維持され購入意欲がかき立てられることは否定し得ないし,そのような者が購入者のうちかなりの数として存在していることは間違いない。

そしてみずから働く者が購入している者のうち多数になる,もしくは多数だと認識されてしまうことは,ブランドの権威に劣化を引き起こしかねない。

実際には,ブランドの売り上げのうち屋台骨となるのはローエンドの製品であることが多い。機械式時計も,複数本所持している人間はかなりまれで,一本のみの所持者の方が多数であることは間違いないだろう。生活する上で,時計は一本あれば足りる。

しかしローエンド製品が主力であるというイメージがつくことは,ハイエンドブランドとしてはなんとしても避けなければならない。

ノーチラスのステンレス三針モデルが完全に廃止され,ゴールドモデルにとってかわるという決断の裏には,ブランド維持という至上命題が隠れているとみて間違いないだろう。

新規のゴールドモデルの定価だが,ノーチラス5711/1P 40周年プラチナモデル(インデックスはダイアモンド,ただ40周年の文字が致命的に格好悪いと私は思っている)が税抜き1236万円であったことからすると,これよりは低いのではないだろうか。

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ステンレス製よりも当然プレミアはつくであろうから,何の根拠もないが,700万円~1000万円の間くらいに設定してきそうな感じがある。

ステンレスモデルのノーチラスだが,今の二次流通価格が高額なのかそうでないのか,判断はつけにくい。ただ,二次流通価格の変動はあっても,定価を割るようなことはないのかもしれない。